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老麺の科学②膨化するときは水素ガス?

2020.10.01

お知らせ 老麺

老麺の科学①からの続き)
老麺には食品検査により酵母菌が多く含まれていることは判明したものの、やはりバクテリアによる発酵がほとんどではないか(酵母発酵は少ない)、と考えます。

老麺は、元種、小麦粉、水で発酵させるが、酵母発酵に必要な糖は加えていないのと、老麺を発酵させたとき炭酸ガスがあまり生じてはいないからです。(酵母発酵=糖をアルコールと炭酸に分解)

老麺を発酵させるとハチの巣のようになってふくらみ、たくさんの気泡(ガス)を含んでいます。しかし、そのガスは炭酸ではありません。老麺の研究の第一人者でもある岐阜大学の長野宏子教授の研究結果によると、老麺に含まれる細菌エンテロバクタークロアカエGAOは、膨化するときに発生するガスの2/3は水素ガスである、という驚くような結果を導きだしています。

「水素ガス」これが老麺の全てかも、というくらい驚愕であり、落胆でもあります。実は、老麺のみで饅頭を作ると、蒸しているときに、多くのガスが生地から抜けて膨らまなくなるのです。なので、膨張補助として、重曹や重炭酸アンモニウムなどで炭酸ガスを加えるのが必須なのです。

パンなどの膨化というのは二酸化炭素で膨張させる、というのが一般的な考え方です。酵母発酵では炭酸ガスが発生し、加熱して膨化中、生地からすべてが抜けてしまうことはありません。

しかし、水素はどうでしょう。元素記号も1番だけあって、水素ガスはとても小さい物質。ゆえに、膨化中、生地の網目から抜けてしまうのではないか、と思うようになりました。知り合いの化学者もこの仮説には同意してくれていますが、残念ながら、老麺についての研究はほとんど日本にはありませんし需要もない。

もし老麺に炭酸ガスが十分に含まれているなら重曹のような膨張補助剤は不要なのです。

もちろん、老麺といっても多種多様、中国の様々な地方から伝わって種継ぎされてきたもの、新たに日本で起こしたもの、りんごなど果物を使って起こしたもの、さまざまであり、含まれる菌の種類、環境によっては膨化の仕方も違うので一概には言えません。

残念ながら、日本においては、老麺だけで生地を十分に膨張させた例はあまり聞いたことがありません。しかし、大昔の中国で、ドライイーストや、重曹やアンモニアパウダーなんてものがあったとも思えませんし、本来的には老麺だけで発酵させていた、もしくは、何かを天然のものをプラスして膨張を強化していた、に違いないはずです。それはいったい何なのか?悶々とした日々が続きます。

つづく

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